Story

バラの国、エチオピア

空を飛ぶバラ

エチオピアとバラ、と聞いても「イメージが結びつかない」という方がまだまだ多いようです。

確かに、エチオピアで輸出用バラ栽培を本格的に始めたのは2000年代に入ってからのことですが、この短い年月の間に急成長し、今やその年間輸出額は1億5000万ドル超。コーヒーに次ぐエチオピアの輸出品目として同国の経済を支え、貧困からの脱出、女性の経済的自立、子供の教育など、重い課題を解決する新しい産業として注目されています。

主な輸出先はヨーロッパ、アメリカにとどまらず、ロシア、中東、中国へと拡大。

日本にも年間1千万本以上やってきているのですが、あまり知られていないのは残念です。

 

 

 

きっかけは一人のエチオピア青年

バラ栽培が広がるきっかけになったのは、アメリカに留学していた一人のエチオピア青年の呼びかけでした。

アメリカでバラ産業に関心をもった青年は、母国こそバラの生育に適していることを知り、帰国してから農家の人々にバラビジネスの可能性を伝え、賛同者を募ったのです。

青年の強い味方になったのは、「エチオピアは農業が救う」という思いで多くの農家を指導してきたTsegaye Abeba氏(元エチオピア花き生産者出荷者組合〔EHPEA〕会長)でした。

その時点で誕生したバラ農家はわずか5つ。

それが、現在は約60(エチオピア人経営の農家に限る)にのぼるまでに拡大し、10万人近い雇用を生み出しています。その大半が女性であるということも、注目すべきでしょう。まさに「エチオピアはバラが救う」勢いなのです。

 

 

バラが喜ぶエチオピアの環境

これほどの成長の要因となったのは、標高2000~2500m(バラ農家の集中する地域)という地理条件がもたらす適度な寒暖の差と、一年中ほぼ軌道が変わらず、真上にある太陽です。

また、害虫対策のためにハウス栽培されていますが、年間を通じて冷暖房の必要がなく、エネルギーコストがかからないこと、豊富な地下水が得られることも好条件となっています。

そこにさらに加えたいのが、豊かな労働力。特に女性の就業率が極めて低いこの国で、増加するバラ農家に就業意欲の高い人材が集まり、明るく活気の満ちた雰囲気を生み出し、それが自然に生産性を高めているといえます。

 

 

幸せな「持続」のために

急成長を続けてきたエチオピアのバラ栽培ですが、そのスピードならではの課題に直面していることも事実です。

たとえば、生産性の高さに着目した外国資本による農家の買収。

エチオピア人が経営に参画できず、単なる労働力でしかなくなれば、仕事へのモチベーションも低下し、現在のようなバラ農家の活気は失われてしまうでしょう。

また、農家の急増による環境破壊も懸念されます。

これについては 政府による農家の分散化などが進められていますが、現場では、まず働く方たちの環境意識を高めることから考えなければならなくなっています。

このように、「持続」のために取り組まなければならない問題は数多くあります。

その解決は、もちろん現地の方たちの手に委ねられるべきだと思いますが、遠く日本からも協力できることはあるはず。

エチオピアンローズ プロジェクトでは、バラの輸入、プロモートにとどまらず、長期的な視点に立った現地農家との交流、問題解決につながるさまざまな活動を計画しています。

 

 

エチオピア産バラの特長

寒暖の差が大きいことは、元気なバラの生育に理想的な条件。花は伸びのびと大きく育ち、花サイズ10センチを超えるものがめずらしくありません。

また、強い紫外線は鮮やかな発色につながります。

日本では栽培が難しい、黄色と赤、白とピンクのコンビネーションなど、 複色系のビビットな色の品種、珍しい黒バラやブラウン系・グリーン系など希少な品種が揃っています。

しかし何といっても最大の特長は、花もちがいいこと。

世界各地に空輸され、長い流通経路を経てもダメージを受けにくく、丈夫で長もちします。

よく、「輸入花は開かない」という方がいますが、その原因は多くが日本に来てからの管理方法によるもの。私たちエチオピアンローズ プロジェクトは、バラが日本に来てから、フレッシュなうちに皆様にお渡しできるよう努力しているので、ゆったりと開き、そのままの状態で更に咲き続けます。

 

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